東京ヘーゲル研究会新規発足の趣意書(旧)

当研究会は白須五男と有井行夫の1980年2月の出会いから生まれた。したがってこの出会いの質が研究会の質を深く規定している。白須五男(1947〜1991年)は天才的な哲学徒であり、有井行夫(1949〜)はマルクス経済学の気鋭の研究者であった。二人の出会いはマルクス経済学の再検討を開始させ、重大な結論を導いた。その結論からすれば、マルクスの経済学の継承者においてマルクス主義は19世紀末にすでに消滅していた。この事実は20世紀の社会科学ないし哲学の評価を根本的に変えるものであった。

諸君がマルクスやヘーゲルを学びかえしたいと考えたとき、すでに眼前の対象的性格はまさに180度転回しているのである。そのような対象の変化は学び方の抜本的な変化を要請することになる。マルクス研究における対象的資料は少なければ少ないほどよい。対象的資料が多ければ多いほど研究の確度は低下するのである。その観点から現代マルクス経済学の惨状は評価されるべきである。現代マルクス経済学はすべて基礎的範疇において性格転換をもたらしているのであり、それは現代マルクス経済学の没落をあかしているのである。現代スターリニスト経済学はヒルファーディングを継承したレーニンの独占資本主義論に由来している。他方、国家論は生産関係の基礎としての所有論に由来している。反スタマルクス経済学の両翼はルカーチの物象化論とヒルファーディングの独占資本主義論に依拠している。

われわれの見解によれば、その惨状のすべての原因はヘーゲル・マルクス関係の誤読にある。ヘーゲルの理解はヘーゲル一般の理解によるのではなく、マルクスのヘーゲル理解によるべきである。これによれば、ヘーゲル研究はヘーゲルの生命空間論として継承されるべきであり、ヘーゲル思惟論はマルクス労働論として継承されるべきであり、ヘーゲル社会システム理論はマルクス『経済学批判要綱』の矛盾論として継承されるべきである。しかるにこれらの基礎的関係はすべて見誤られ、20世紀実証主義の姿態に骨化された。

当研究会の喫緊の課題はヘーゲル・マルクスの現代的構図に基づいて新古典派経済学など20世紀実証主義に立つ諸学の抜本的な批判を実現することである。当研究会は白須・有井の出会いの精神を実現し、白須・有井を越えて進むべきものである。本趣意書によって論争を着想した若い諸君、本趣意書に21世紀が進むべき指針を感じ取った全ての皆さんは、すべからく東京ヘーゲル研究会のもとに参集されたし。すべてに答える構えで東京ヘーゲル研のメンバーが諸君を待ち受けているはずである。

本趣意書に共感し本会への参加を真摯に希望するものは、老若男女、研究者・学生・勤労市民、経済学・政治学・哲学など専攻・関心分野の別なく、東京ヘーゲル研事務担当(thw-secretariat@hegel-marx.jp)までご連絡頂ければ幸いである。

2014年10月15日 東京ヘーゲル研究会世話人 有井行夫