テキスト | 『大論理学』武市訳(岩波書店) 第1巻 有論 第1編 規定性 第2章 定有 |
---|---|
報告 |
|
東京ヘーゲル研究会は、カール・マルクスの学的生涯をドイツ観念論哲学、とりわけその集大成としてのヘーゲル哲学の批判的継承として読み解くという野心的な志を掲げ、有井行夫、白須五男(敬称略、以下同様)を中心に1979年1月21日発足した。
チューター・白須五男亡き後に刊行された、有井行夫・長島隆編『現代認識とヘーゲル=マルクス認識主義の没落と存在主義の復興』(青木書店、1995年)の冒頭には、同書の目的が余すところなく伝えられている。
「本書の目的は、ヘーゲルとマルクスの同一性論の再検討をとおしてマルクスの存在主義をあきらかにし、その現代的復権について課題提起することである。ドイツ観念論の試みの完成ともいうべき存在主義こそが実はマルクスの唯物論であり、批判的社会認識の原理であった。しかし今世紀初頭にはこのマルクスの原理は見失われ、マルクス主義が実証主義と現象学との対立のはざまで理論的に翻弄されるなかで、今日まで再発見されることがなかった。」(同書序論、3頁、有井執筆)
ドイツ観念論、とりわけヘーゲルの基礎上に開かれた「存在主義」即ち「批判的社会認識の原理」は、本会創設以来の存立根拠である。それが本会の指導原理として揺るぎないものであることは、本会の創設者にして運営責任者、研究リーダーとして絶大な功績を残した有井行夫が健康上の理由で本会を退会した本年6月28日以降も、何ら変わるところはない。
本会は、日本のみならず世界の社会科学史に大きな一石を投じた有井行夫の一日も早い健康の回復を祈念すると同時に、有井・白須の志を創造的に継承すべく、その運営指針を以下の如く申し合わせた。
学生・研究者、大学人・一般勤労者、職業、立場の如何を問わず、本会存立の精神にのっとり、無限に変化する事実を前に学知の真実を求め続ける老若男女の参加を期待する。